本文へスキップ

神田 径(かんだ わたる)

東京工業大学 科学技術創成研究院 准教授
多元レジリエンス研究センター 火山・地震研究部門/地球惑星科学系

2010年より東京工業大学の隔地施設である草津白根火山観測所に勤務しています。主に電磁気学的手法を用いて、火山の構造や噴火に至るプロセスなどを研究しています。

姶良カルデラマグマ探査


科研費補助金 基盤研究(B)「海域に推定されるマグマ供給系の地下構造調査による実体解明(代表:神田径)」によるプロジェクト

概要


姶良カルデラは、桜島の北方、鹿児島湾奥部に位置するカルデラで、その地下10km付近には、活発な火山活動を続ける桜島のマグマ溜まりがあると考えられています。この研究は、姶良カルデラ地下のマグマ溜りおよび桜島火山へのマグマの供給経路に相当する地下構造を明らかにすることを目的としています。
2009年から4年間かけて、姶良カルデラを横断する3測線で電磁気構造調査を実施しました。姶良カルデラの大半は海域にあるので、海域では海底電位磁力計という観測装置を海底に投入します(図1)。この装置の四方に伸びた腕の先に電極が装着されていて、直交する2成分の電場を測定します。また、磁力計が中央の黄色の容器に固定されていて、磁場の直交3成分を測定します。測定されたデータは、黄色の容器の中にある耐圧ガラス内のデータロガーに記録され、2〜3週間後に装置を浮上させて回収します。2012年までの4年間で、海域16点、陸域28点の合計44点において、MT法による電磁場5成分を測定しました(図2)。
測定されたデータを用いて、3次元比抵抗構造モデルの推定を行ったところ、姶良カルデラ中央からやや東にかけての深さ5km付近に顕著な低比抵抗領域が見つかりました。この低比抵抗領域は、深さ10kmでは桜島の東部が最も低い値を示しますが、桜島から姶良カルデラを横断して北東方向に低比抵抗帯を形成していることがわかりました。この3次元モデルを測線に沿って切り出して見てみると(図3)、3測線とも姶良カルデラ中央から東よりに低比抵抗領域が下部地殻から続いていることがわかります。まだ検討の余地はありますが、鹿児島地溝に沿ってこのような低比抵抗帯ができているようにも見えますので、東西伸張場で薄くなったところをマグマが上昇してきているのかもしれません。
obs site model
図1:海底電位磁力計を投入する直前の船上作業。背景は桜島昭和火口からの噴火。 図2:観測点位置図(▽)。2009年からの4年間で海域16点、陸域28点でMT法による電磁場観測を行った。 図3:3次元比抵抗構造モデルのカルデラを横断する測線に沿った断面図。

ナビゲーション