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神田 径(かんだ わたる)

東京工業大学 科学技術創成研究院 准教授
多元レジリエンス研究センター 火山・地震研究部門/地球惑星科学系

2010年より東京工業大学の隔地施設である草津白根火山観測所に勤務しています。主に電磁気学的手法を用いて、火山の構造や噴火に至るプロセスなどを研究しています。

水蒸気爆発発生場の地下構造


科研費基金 基盤研究(C)「精密地下構造調査と地盤変動検出による水蒸気爆発型噴火の可能性評価(代表:神田径)」によるプロジェクト

公表論文 Seki et al. (2015)  Earth Planets Space 67:6
     Seki et al. (2016)  J. Volcanol. Geotherm. Res. 325: 15-26

概要


2014年9月の御嶽山の噴火をはじめとして、最近いくつかの火山で水蒸気爆発が発生していますが、残念ながらその発生機構はよくわかっていません。私たちは、この種の噴火を理解するためには、地下構造を明らかにすることが重要だと考えています。これまで、口永良部島や阿蘇山などにおいて、水蒸気爆発の発生場と考えられる活動火口周辺の浅部地下構造を明らかにしてきました。これらの火山に共通して見られた地下構造の特徴は、極めて低い比抵抗帯として観測され る熱水変質した透水性の悪い岩石層と、その直下のやや比抵抗の高い蒸気が卓越した熱水流体溜りと考えられる領域の存在です。地下から上昇してくる流体の蓋の役目を果たすため、私たちはこれをキャップ構造と呼んでいます。水蒸気爆発の発生には、このキャップ構造が重要な鍵を握っていると考えています。
この研究では、火山ガス成分に変化が観測されるなど、近年火山活動が活発化している弥陀ヶ原火山地獄谷を対象として研究を行っています(図1)。地獄谷は、過去に水蒸気爆発を繰り返したことが知られていますが、地球物理学的な調査・研究はほとんど行われていませんでした。そこで、私たちは、この地獄谷の周辺で2013年〜2015年にかけてAMT法による地下構造調査を合計25点で行いました(図2)。
二次元解析を行ったところ、地獄谷の直下には低比抵抗帯が広がり、その下500m以深では高比抵抗体が存在することがわかりました(図3)。 浅部の低比抵抗帯は、より低い値を示す上部と、相対的に高い値を示す下部に分かれており、上部は熱水を含んだ粘土混じりの堆積層、下部は熱水に高温の火山ガスが付加されたものであると解釈しています。堆積層は透水性が悪いため、この低比抵抗帯上部が下部に存在する火山ガスを留める蓋の役割を果たしており、キャップ構造が認められます。地獄谷で見つかったキャップ構造が、水蒸気爆発の発生場であるのかどうか現時点でははっきりしませんが、この研究プロジェクトでは、温泉水の分析やInSARという技術を使った地盤変動の検出も試みています。これらのデータやAMT法データの三次元解析から、より詳細な地下構造を検討しているところです。
図1:弥陀ヶ原火山地獄谷の噴気活動。 図2:観測点位置図(○)。2013年からの2年間でAMT法調査を合計25ヶ所で行った。 図3:地獄谷を北東ー南西に横断する2次元比抵抗断面図。

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